1. 多接合タンデム太陽電池の高効率化

  太 陽電池をタンデム構造にすることで、幅広い太陽光スペクトルを吸収 し、 変換効率を高めることが可能となります。現在、InGaP/GaAs/Geを用いた 3接合タンデム太陽電池が実用化されていますが、4接合が実現できると 50%以上の変換効率が達成できます。

  我々は、将来の4接 合タンデム太陽 電池に必要なGe基板と格子整合し1 eV付近のバンドギャップをもつ材料と して、1〜2%の窒素を添加したGaInNAs希釈窒化物半導体の開発を行っています。

  現在、分子線エピタキシー法を用いて1.07 eVのバンドギャップをもつGaInNAs薄膜 の作製に成功しており、タンデム太陽電池への適用を目指してさらなる高品質化を進めています。


2. 自己組織化技術を用いた3次元量子ナノ構造の作製技術

   量子ドットを用いては、ド・ブロイ波長程度のナノ空間に電子や正孔 を空間的に閉じ込めることができます。また均質な量子ドットを高密度で 3次元的に規則正しく並べた構造は量子ドット超格子と呼ばれ、従来素子の 高性能化や新規デバイスの実現ができる可能性があります。量子ドットの作製には、 基板材料と量子ドット材料との格子定数差による格子ひずみを利用した自己組織化成 長技術がありますが、多くの量子ドット層を積層する場合、サイズの不均一や転位の 発生が問題となります。

  そこで我々は、GaAs基板上のInAs自己組織化量子ドットを取り上げ、 GaAsよりも格子定数の小さいGaNAsを埋込層とするひずみ補償成長法を開発しました。 この成長法は、埋込層で量子ドットとは逆向きの格子ひずみを発生させて、 1周期毎に平均ひずみを一旦ゼロに戻しながら多層化を行うことを原理としていますが、 現在、50〜100層の量子ドットを積層させることに成功しています。


3. 未来型量子ドット太陽電池の作製

   近年、単接合太陽電池の変換効率を上回り、 かつ製造コストが50円/W以下を展望できるような革新型太陽電池の技術開発 が世界の主要研究機関で加速しています。量子ドットを3次元的に配列した 超格子構造では、量子ドット間の電子的結合が起こりミニバンドが形成されます。 

 ミニバンド間の光学遷移を利用して、また2光子吸収などより複雑な吸収過程を 利用して、変換効率60%以上の太陽電池が実現できる可能性があります。我々は、 このような量子ドット超格子を利用した太陽電池における光電変換メカニズム の基礎物性の解析と制御に関する研究を進めており、換算変換効率16.1%の太陽電池を実現しています。